ボバース概念に則った脳性まひによる障害の医学的治療に特化した大阪発達総合療育センター

ボバースコンセプト

当法人は、日本ではじめてボバースコンセプトに基づいてリハビリテーションを実践してきた施設です。

 ボバースコンセプトは、英国のボバース夫妻によって1940年代から提唱された、脳性まひなどの中枢神経系疾患がある子どもや成人の治療のための考え方です。一人ひとりの潜在する能力を評価し、発揮しやすくする手技も合わせて示しています。
脳の損傷によって生じる姿勢と運動の機能障害について、鋭い観察と分析的思考によって「子どもの発達」を「最新の科学」から解釈して、一人ひとりにあわせたオーダーメイドの治療日常生活の過ごし方を提案します。


 ボバースコンセプトは、「ボバース概念」、「ボバースアプローチ」、「神経発達学的治療(Neuro Developmental Treatment:NDT)」、「ボバース法」など、色々な呼び方があるゆえに、誤解も多くあるようです。本意は、子ども一人ひとりの必要にあわせた、きめ細かな療育を行っていきます…ということです。さらに、子どもと家族を中心にして、理学療法士作業療法士言語聴覚士,医師,看護師,介護福祉士,保育士,教師,など子どもを取り巻く多職種によるチームでの取り組みの内容全体を表しているため、すべての子どもが、全く同じ方法で同じ量の治療を一律におこなうような取り組み方ではありません。また、常に最新の科学を取り入れて治療内容を変革していこうとする姿勢もボバースコンセプトの特徴です。子ども一人ひとりによって治療内容は異なり、変化しうるものです。ご家族に治療内容や子どもの様子をわかりやすく説明しながら、支援について手を取り合って進めます。もし、治療内容やホームプログラムについて、分かりにくいところがあれば遠慮なく担当者にご相談ください。


 ボバースコンセプトに基づいた治療について、療法士が学ぶ機会として、ボバース8週間基礎講習会があります。ボバース8週間基礎講習会は、1958年から英国のロンドンボバースセンターでボバース夫妻により始められ、多くの指導者を世に送り出し、世界各国に普及しています。我が国においては、1970年から現理事長でもある梶浦一郎が当法人(当時の愛徳姉妹会 聖母整肢園)創設時から導入し、1973年にはロンドンボバースセンターと同様の講習会をこの地で開催できるようになました。現在では毎年、東京と大阪でボバース8週間基礎講習会が開催されています。また、看護師や介護福祉士,保育士,教師を対象とした療育多職種講習会をはじめ、ボバースセンターから講師を招いての上級講習会など、様々な講習会を企画、開催しています。


 子どもの潜在能力を最大限に引き出し、あきらめず、留まらず、常に新たなことに挑戦し続けるボバースの精神は、愛徳福祉会の理念のなかに誇りとともに引き継がれています。

ボバースコンセプト


ボバース夫妻
理学療法士である妻のベルタ・ボバース(Berta Bobath)は、1940年代にイギリスに亡命し、1943年に脳卒中を患った王室肖像画家サイモン・エルビス氏の右上肢の治療を要請されました。当時、主流であった物理療法やストレッチでは減弱しなかったサイモン氏の右上肢の筋緊張が、姿勢を変えたり、屈曲している関節を敢えて屈曲させることで緩むことに気付きました。これを契機に、神経科医である夫のカレル・ボバース(Karel Bobath)博士と二人三脚で治療法を開発していきました。
姿勢と運動の機能障害
姿勢と運動の機能障害が脳性まひの主な症状です。様々な筋の緊張状態を示し、姿勢を適切に保ち、効率的に動くことが難しくなります。筋の緊張状態が高い子どもは、運動の種類や範囲が少なくなり、緊張状態が低い子どもは、姿勢を保ったり運動のスピードの調節が難しくなったりします。また、緊張状態が変動する子どもは、安定しにくくバラバラした動きになることもあります。その結果、様々な運動の感覚を経験することが難しくなります。
子どもの発達
両親から受け継いだ遺伝情報と、生まれ育つ環境のなかで適応していく学習過程との相互作用によって子どもは発達していきます。
最新の科学
医療をはじめ、科学は日進月歩発展していきます。ある事柄について解釈・説明されていたことが、最新の科学によって異なる解釈がなされることもあります。ボバースコンセプトも創設当時の概念を大切にしつつも、常に最新の科学的根拠をもって説明する姿勢が求められます。
オーダーメイドの治療
子どもの症状は、似通ったところもあるかもしれませんが、一人ひとり異なります。また、生活様式・生活習慣も異なります。
一人ひとりにあつらえた個別の治療プログラムを考えることが大切です。
日常生活の過ごし方
姿勢、運動面の発達を考えて、身辺動作の自立や自己の役割をもつことなど、日常生活の過ごし方を考えることは大切です。
色々な呼び方がある
ボバース夫妻は当初「ボバースアプローチ」を用いましたが、「ボバース法」「ボバースメソッド」などいろいろなかたちで呼ばれるようになりました。しかし、ボバース夫妻は自分たちの名を冠した名称を好んではいませんでした。また、治療体系がアメリカに伝わっていく際、アメリカの医師や学者は個人の名を冠した名称を嫌う風習もあり、「NDT(神経発達学的治療)」を用いるようになりました。
その後、アメリカNDT協会(NDTA)は、全米に普及すべく8週間基礎講習会の内容をマニュアルにし、講義テーマを切り分けて講習会の開催に取り組みました。こうしてNDTは全世界に普及しましたが、皮肉なことにボバース夫妻らがもっとも嫌う画一的な手法として伝わることとなりました。さらに、経済モデルの導入も加わり、その有用性が疑われるようになりました。晩年、ボバース夫妻らは薄利多売の様相を呈したNDTAの状況を嘆いていたようです。ボバース夫妻が逝去されたのち、ロンドンの弟子たちは、「日々の臨床実践と最新の神経科学および発達科学を取り入れることを特徴とした治療体系ゆえに、強調点は常に多様に変化するが、一貫して変わらない基本的概念がある」ことを主張する必要があると考え、「ボバースコンセプト」と呼ぶようになりました。
子どもと家族を中心
治療は、子どもが主役となり、最も身近な支援者である家族と子どもとの主体性を重んじながら進めていきます。
理学療法士
基本的な姿勢と運動機能を支援します。運動がうまくできない(非常に努力してしまったり、方法がわかりにくかったりする)子どもたちに、できるだけ正しく動く方法を指導して身体で覚えてもらえるよう支援します。
作業療法士
基本的な姿勢と運動を幅広く日常生活活動に応用して子どもの生活を豊かにして行く支援をします。食事、お着替え、入浴、排泄、学習、遊びなどが上手くいくよう、運動面、感覚面、認知面、環境面を整えていきます。
言語聴覚士
発語器管として口腔周辺の働きを改善しながら、食物を噛む・飲み込むことの機能改善に取り組みます。また、遊びなどを使って、ことばの理解、コミュニケーション方法の獲得も支援していきます。
チームでの取り組み
多職種が連携して情報を交換したり、それぞれの専門的な視点を持ち寄り、関係する職種がチームを組んで、子どもたちの可能性を見出し、発達を促進する取り組みを行います。
療法士
日本では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が国家資格として位置付けられています。
ボバース8週間基礎講習会
ボバースセラピストを養成する8週間基礎講習会は、ロンドンボバースセンターを中心に作成されたコアカリキュラムをもとに、アジア小児ボバース講習会講師会議にて、毎年講習会の内容を検討しつづけています。
ボバースセンター
ロンドンを本拠地とし、ウェールズやスコットランドにも拠点をかまえ、脳性まひの子どもの治療と講習会の開催を行っています。
指導者
8週間基礎講習会を修了後も、臨床実践のなかで研鑽を積み、上級講習会、セカンドコースを経つつ指導者を育成しています。
梶浦一郎
整形外科医。当法人の創設者で理事長。
聖母整肢園
開設当初、愛徳姉妹会の敷地内の建物を借りて、聖母整肢園がスタートしました。
療育多職種講習会
看護師、保育士、介護福祉士、学校の先生、言語聴覚士、歯科衛生士など療育に携わる職種に、脳性まひの子どもたちを理解していただくための講習会を企画、開催しています。
上級講習会
8週間基礎講習会を受講し修了した療法士が受講資格となります。2007年にはロンドンボバースセンターから作業療法士のヘザー・ホルゲィト先生が、2010年には理学療法士のクリスチャン・バーバラ先生が当センターで講師を務められました。
愛徳福祉会
1970年設立時に梶浦一郎らが示した、「①施設収容よりも在宅療養を ②脳性まひに対する積極的な医療 ③脳性まひの療育は0歳から」の基本理念をもとに、1980年愛徳姉妹会から愛徳福祉会として運営とともに引き継がれました。