ボバースコンセプトに基づく神経生理学と発達学とを融合させた治療を行う大阪発達総合療育センターのリハビリテーション部

リハビリテーション部

リハビリテーション部は、理学療法科作業療法科言語聴覚療法科、からなり、ボバースコンセプトに基づいて、子どもの様子を理解し、一人ひとりに合った治療支援を行なっています。
その手段は、子どもにあった的確なハンドリングと、正常発達の知識をもって、本人が主人公になる活動場面を工夫することにあります。



基本方針

リハビリテーション部では、早期治療から長期フォローまで、ボバース・コンセプトに基づく 神経生理学と発達学との融合させた質の高い治療を提供すべく、現場主義でのセラピストの育成に力を注いでいます。

特徴

常に挑戦する個別治療の実践 ―
科学が発達して今では、DNA染色体の元素まで特定できる時代になっていますが、脳の損傷から脳性まひなどの障害が起こることに対する解決策の全てが判明しているわけではありません。ただ、ボバースコンセプトに基づく治療体系が創始された時代は、脳障害は治らないとされていましたが、今は、脳の可塑性(かそせい:変化する可能性)や臨界期(りんかいき:適切な学習を行うべき時期)に関する研究も進み、早期治療の有効性が解明される時代となっています。そして、子ども一人ひとりが、それぞれ個別の課題解決を求められますから、私たちは、脳の障害をよく理解し、科学的根拠を確認しながらも、脳障害の修復や発達の可能性が最も高い乳幼児期に、子どもたちの障害の軽減と、将来の自立にむけた運動をできる限り身につけておけるように考えます。たとえば、目の機能の臨界期は、4-8ヶ月といわれています。物を認識したり、自己身体と空間の関係を理解したりといった、子どもたちの視知覚(見て理解する力の発達)には、この時期の運動経験が深くかかわっています。生活体験も含めて早期から見る力を育てる配慮が重要と考えています。運動経験は、視知覚だけでなく口腔運動手先の器用さなど、様々な生活機能認知機能の基盤になっているのです。乳幼児期における脳の発達から、子どもの将来の可能性を信じ、未来を担う子どもたちを育てていくために、一人ひとりに必要なことを考え、お母様やご家族とともに、常に挑戦しつづけたいと思っています。

家庭療育(日常実現できる具体的プログラムを提案)―
脳障害への治療は、セラピストが行うだけではありません。脳は環境の影響を受け24時間発達し続けます。子どもたちがすごす生活環境を少しでも子どもたちの可能性を開く環境にしてあげること。たとえば、お母さんの抱き方や、多くの時間をすごす布団やマット、椅子、そしてオムツの替え方お風呂の入れ方など、日々の育児方法を一緒に考え、それが、発達の支援となるようにします。子どもたちに適切な運動経験を提供し、少しの介助を行うことや器具、環境の工夫によって、潜在する能力を生活場面で十分引き出し、積み重ねます。子どもたちにとって最も重要な環境であるご家族との相互作用によって日々成長する喜びを、お互い感じあい、楽しく、有意義な子ども時代であるようにお手伝いします。そこで培われた親子関係ご家族との関係性を基盤に、保育所や幼稚園、小学校へと進学される際、ご家族が自信をもって子どもたちを街に送り出せるようお手伝いしたいと考えます。他者の援助を受け入れたり、自立の準備したりするための具体的な方法や、心の発達が家庭で養われます。この大切な時期の子育てをご一緒に楽しみましょう。

潜在能力を理解し引き出す高度のハンドリング技術
脳は、感覚と運動の情報処理過程を積み重ねることによって発達します。脳障害で運動発達の遅れた子どもたちは、次の発達に必要な感覚情報も不足します。ボバースコンセプトに基づく治療では、子どもが難しい運動を補うハンドリング(援助技術)によって、子どもに不足しがちな感覚運動経験を家庭療育で積み重ね、年齢に応じた運動学習を促します。その技術は「正常姿勢制御機構」(人の脳と身体の運動の仕組み)を熟知し「正常発達知識を治療的に応用する」(子どもの正常発達の仕組みを分析整理して治療に組み入れる)ということを背景として、子どもたちに必要な運動を引き出す技術です。赤ちゃんは、なぜ勝手に座ったり立ったりできるようになるのでしょう。健常児の運動発達のメカニズムを分析し、効果的に運動を成功できるように援助します。子どもたちは、常に新しい課題に取り組もうとします。そのとき、子どもたちが成功体験を積み重ねることができ、新しい機能を獲得できるように私たちは、常に最高の技術を提供できるよう努めます。

問題解決型チームアプローチによる多角的支援
子どもたちは成長・発達すると、新しい生活上の課題が出てきます。年齢とともに、子どもたちの運動学習の動機や習得方法は、変わっていきます。3歳までは自律反応(無意識的な運動)が変化するよう治療を行いますが、子どもの意思がはっきりしてからは、子ども自身の随意運動が成功するように援助し、子どもが自ら工夫し、生活場面で成功できるように機能獲得計画を立てます。学童期以降は、学校生活での適応や自立することが多くなるように必要な運動学習を援助していきます。着替え、入浴、トイレット動作といった生活活動は、年々介助量が多くなりがちです。ただ例えば、リハ経験のある10歳を過ぎた子どもたちには、小さい時からリハビリテーションを受けて積み重ねてきた過去の運動の感覚を再認識し、目的となるADL動作習得のために自分の身体を「うまくつかう」ことを学習してもらいます。そして、本人はもちろん、直接介助にあたるご家族看護師保育士介護福祉士といった専門職、学校の先生福祉現場の方々など、多くのとりまくチームでのアプローチが必要です。みんなで、子どもたちの将来にむけて取り組めるような体制を構築していきたいと考えています。その糸口として、療育多職種講習会などを企画し開催しています。

職員紹介

部長 黒澤淳二(作業療法士)

私たちは、ボバース概念を基盤とし、①ハンドリングにより潜在するお子さんの感覚と運動に働きかけ、②課題や環境の調整をはかりつつ、③運動学習をとおして発達を支援し、④多職種連携を推進していくことで、⑤その人らしく生きるご本人と支援者の認知機能に働きかけてまいります。お互いの可能性を発掘、開拓するために、PT,OT,STの専門性を発揮して、あきらめず常に新しいことに挑戦してまいります。


次長 鶴田ゆかり(理学療法士)

理学療法士として障害を持つ方々の運動機能と身体状態に対して重要な役割を担っていることを自覚し、患者さんとご家族と深く向き合い、そこから学ぶ姿勢を忘れずに、常に患者さんとご家族に寄り添い、その生活に役立つ技術集団を目指したいと考えています。


次長 辻薫
(認定作業療法士、特別支援教育専門作業療法士)

地域において安心して生活できるように、そして皆様の期待に応えられるように、作業療法士の立場から実践、研究、教育を怠ることなく精進してまいります。広く地域社会に対しても、ボバース概念に基づく24時間マネジメントやチームアプローチの重要性をアピールし、参加していただけるよう働きかけます。 子どもから大人に成長する将来を見通して、センターから地域の専門施設、保育所、幼稚園、学校、デイサービス、仕事場、作業所などと連携して、チームリハビリテーションを推進します。


エキスパートPT 彦田龍兵(理学療法士)

当センターは生後2歳までに何らかの要因で、運動障害を伴っている方が主に利用されています。運動をつかさどる身体機能や姿勢、緊張状態の改善について今まで培ってきた知識と技術を理学療法士のエキスパートとして、当センターを利用される方々のお役に立つことができるよう微力ながらもがんばります。そして、提供するサービスが臨床の根拠に基づくものとしてわかりやすいよう納得していただくよう努めます。また、後進の育成とともに開設から40年を経て現在までに蓄積された資料を臨床に生かすことも役割の一つです。


各科紹介

理学療法科(PT科)

作業療法科(OT科)

言語聴覚療法科(ST科)



早期治療
子どもは発達過程で様々な感覚・運動学習をしていきます。
早期からの治療で適切な感覚・運動学習が行えるようにすることが大切です。
長期フォロー
人は生涯にわたって発達します。長期的視野で子どもと家族を見守り、それぞれの発達課題への柔軟な対応を考えます。
ボバース・コンセプトに基づく
ボバースコンセプトは、中枢神経系の障害による筋緊張、運動および機能の障害を持った個人の評価、治療への問題解決アプローチです。感覚・運動学習を積み重ね、個性ある発達を尊重しています。
神経生理学と発達学との融合
神経生理学は、神経系の機能を研究する学問です。一方、「人はなぜ発達するのか」を研究する学問として、発達学があります。ボバース夫妻は臨床実践の成果を、神経生理学と発達学から説明し、仮説検証作業を積み重ねました。神経発達学は造語ですが、現在では神経系の発達からの見方も普及してきました。
現場主義でのセラピストの育成
情報化社会のなかで最新の科学的知識の導入をはかりつつ、目の前の一人一人の子どもと接することでしか得られない臨床現場での経験を重要視し、職員教育を行っています。
可塑性(かそせい)
脳の働きは神経ネットワークによって成り立っています。新しくネットワークが形成されたり、損傷された部分を補うように働くなど、現代では脳は変化し得るものと考えられています。
臨界期
発達過程において、ある行動の学習が特定の時期を過ぎると成立しなくなる限界の時期のことを言います。臨界期を越えても学習が成立することもありますが、できるだけ適切な時期に必要な学習を進めていくことが必要です。
科学的根拠
脳や神経系の最新の知見をもとに、治療での反応を論理的に考察し、仮説を立て実証することで、治療の根拠を得ていく必要があります。
乳幼児期
乳幼児期は、身辺動作の自立や、就学に向けての学習を進めていく時期であるため、脳の発達が盛んなうちにたくさんのことを吸収できるような支援が必要です。
視知覚
視知覚とは、目から得た刺激を情報として捉える、一連の機能をさします。線や形の構成、奥行き、空間関係などをどのように捉えているか、生活や学習場面でとても重要な機能となります。
運動経験
子どもたちは、自分の身体の動きを通して、物の見え方の変化や、物と自分の空間関係などを学んでいきます。自分の身体をどのように扱うかが視知覚の機能の発達に重要となってきます。
見る力
「見る」ことは、ただ眼球に像が映るだけでなく、対象物に注意を向け認識し、その物に対し働きかけたいという意欲が必要です。家族との関わりの中で、お子さんに呼びかけ、触れるなど、たくさんの感覚を用いながら遊ぶことが大切です。
口腔運動
口腔機能(唇や舌など)が上手く働くには、頭が安定していることが必要です。口の動きは首、お腹など全身の運動と影響し合っています。
手先の器用さ
手先を上手く使うためには、腹部をしっかり働かせて姿勢を保ち肩が安定している必要があります。大きく身体を動かすなかで、体幹と肩の安定や上下肢の運動経験を積んでいきます。
生活機能
食事、排泄、着替えなど、日常生活を行うことの機能を指します。その活動のためには、全身の柔軟さや滑らかな身体の動きが必要となります。
認知機能
子どもは動きを伴うことで、物の性質の違いを感じたり、自分の置かれている状況を認識していきます。また、言葉、記憶、時間、計算などの概念の形成にも運動は重要な要素となります。
子どもの将来の可能性
人は生涯にわたって発達していきます。一人ひとりのペースに合わせた成長、発達を支援できるように関わっていきたいと考えています。
環境
物や場所などの物理的環境と人による人的環境。個人と環境と課題(作業)が相互に影響し合っていることを常に考慮して、支援します。
24時間
24時間を子どもや家族がどう過ごしているのか、最適な時間に適した姿勢管理や活動が行なえるよう調整することが大切です。
抱き方
抱っこの中で子どもは姿勢を整えたり運動の感覚を経験していきます。抱っこが難しい子には、安定する抱き方を一緒に検討していきます。
オムツの替え方
オムツを替えるとき、足が突っ張って開きにくい、足がダランとして持ち上げにくいなどの難しさのあるお子さんには、やりやすい方法を検討していきます。
お風呂の入れ方
抱き上げて浴そうに出入りするとき、そり返ったり、身体の緊張が低くてずり落ちそうになるなどの難しさがあるお子さんには、より姿勢を安定させて危険のないようにお風呂の入り方を一緒に検討します。
相互作用
ご家族がお子さんと目と目を合わせて話しかけたり触れたりする関わりの中で、お子さんの反応に応え、相互にやり取りを積み重ねることが、運動、感覚、認知の発達にとって重要な要素となります。
親子関係
ご両親との関係の中で、安心できる場所を持つことが、外界への探索へとつながります。そのためにも子どもが心地良く感じる関わり方や遊びを提案します。
ご家族との関係性
ご両親だけでなく、祖父母や兄弟など、たくさんの人と関わること、家族団らんの中にいることも、子どもの社会性、認知面、情緒面などの発達には重要です。
感覚と運動の情報処理過程を積み重ねること
皮膚や筋などの感覚受容器から感覚を感じ、様々な運動の情報をうまく処理・対応し、その結果から運動を再現していくことを積み重ねる過程が、運動の学習や認知の発達にとって大切です。
ハンドリング
ハンドリングとは、支援技術のひとつで、身体の構造や運動を考慮し、お子さんの遊びや活動が成功するよう支援することをいいます。
正常姿勢制御機構
1人の脳と身体運動の仕組み。人がどのように姿勢をコントロールしているかという知識をもとに、どこを助けてあげれば自分でコントロールしやすいかを、お子さんの反応から読みとり、支援していきます。
正常発達知識を治療的に応用する
子どもの正常発達の仕組みを分析、整理して、治療に組み入れること。子どもがどのような順序で発達していくのかを知り、その子に抜けおちている課題や、次のステップを考えていきます。
成功体験
自分からの働きかけにより、人や物を動かせたという成功体験は、自己有能感や自信につながります。成功体験は、新しいことや難しいことにチャレンジしたり、他のことへ応用していくための基盤となっていきます。
新しい機能
新しい機能を獲得するにあたり、その過程で子どもが何を学んでいくかが重要となります。運動、感覚の経験だけでなく、「できた」という喜びを周りの人と共感しあうことが大切です。
自律反応
無意識的な運動で、例えば姿勢の平衡を保つなど、意志とは関係なく調節する反応のことです。
随意運動
自分の意志によって行われる運動のことです。脳からの指令によって、筋肉が収縮し運動が起こされます。
運動学習
運動の習得と修正を意味します。運動の感覚が脳に蓄積されることにより、より効率的な運動となっていきます。
ご家族
いちばん身近な存在であるご家族の日々の関わりは子どもたちの発達にとって大切です。
看護師
安全で楽しい生活が送れるよう、医療的ケア、療育看護を通して子どもの発達を支援しています。
保育士
子どもが豊かに楽しく主体的に過ごすことができるよう、子どもと家族に、生活全般にわたって支援しています。
介護福祉士
その人らしさを大切に考え、日々の中で生きる楽しさを共感しながら日常生活支援を行っています。
学校の先生
必要に応じて、学校の先生と学校生活で留意していただくことや、椅子、机、教材、提示の仕方などを検討しています。
福祉現場の方々
デイサービスやヘルパーなど日々の生活に関わる方々と連携を取り、その人らしく生活を送れるよう支援します。
療育多職種講習会
看護師、保育士、介護福祉士、学校の先生、言語聴覚士、歯科衛生士など療育に携わる職種を対象として、脳性まひの子どもたちを理解していただくための講習会を企画、開催しています。